今度こそ、練愛

ゆったりと通りを歩きながら、仲岡さんと話は尽きない。次々と途切れることなく話していると、あっという間に店の近くまで帰っていた。



「有希ちゃんは電車通勤だよね、今度の歓迎会の帰り、よかったら乗ってく?」



この帰り道の途中から、仲岡さんは私のことを名前で呼んでくれるようになった。あまり名前で呼ばれ慣れていないから、ちょっと照れ臭いけれど嬉しい。
まるで姉ができたような気分。



「ありがとうございます、仲岡さんは車で来るんですか?」

「うん、その日は電車で来るつもり。旦那に迎えに来てもらうから、有希ちゃんも乗って帰りなよ」

「いいんですか? お邪魔になりません?」

「大丈夫、気にしないで」

「じゃあ、よろしくお願いします。普段は車で通勤してるんですよね、どこに停めてるんですか?」

「店の裏に駐車場があるの、すぐそこの道を入ったところ」



仲岡さんが通り沿いに見えてきたひょいと曲がる。ちょうど道の裏側にぽっかりと開けた駐車場があって、何台か車が停まっている。



「私の車はあの奥に停まってる白くて小さい……」



言いかけて、仲岡さんが立ち止まった。
白い小型車の隣に停まっている大きな車が動き出す。



あれ? どこかで見たことあるかも……



車幅の大きな黒いセダンがゆるりと前を通り過ぎていく。





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