鬼部長と偽装恋愛はじめました
「えっ⁉︎」

と声を上げたのは私で、持っていたフォークをお皿に落としてしまった。

部長も、予期していなかったであろう質問に、すぐには答えられないでいる。

どうしよう……、まさかこんなストレートに突っ込んだ質問をされるとは思わなかった。

すると母も手を止め、部長を穏やかに見つめた。

「若狭さん、お気を悪くされたらごめんなさい。でも私もひとりの母として、娘の幸せを願いたいのよ」

「もちろん、それは当然です」

部長も真剣に頷き、母の言葉に耳を傾ける。

「若狭さんはご存知でしょうが、佐原さんは地元で開業医をされているお医者さんです」

以前から知り合いの部長は、当たり前に頷いているけど、佐原さんの職業すら知らなかった私はア然とした。

「だから、佐原さんには転勤がないんです。娘が仕事を続けるのを、快く了承してくださってますし……」

佐原さんと、そこまで話を詰めていたなんて、母がお見合いに本気なのが改めて分かって気が重い。
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