鬼部長と偽装恋愛はじめました
でも、ここまできたら、自分の思いも貫きたい。

部長にも協力してもらってるわけだし、簡単に折れるわけにはいかなかった。

「待って、お母さん。祐平さんに、今それを聞かないでよ。簡単に答えられることじゃないし」

「そういうわけにはいかないでしょ。佐原さんが、香奈美とのことを前向きに考えているのに」

そう言われても、部長が『結婚します』と答えられるわけがない。

ほとほと困っていると、部長がキッパリと言った。

「僕は、香奈美さんとの結婚を考えています。ですからどうか、彼女をここで頑張らせてあげてください」

頭を下げる部長に、胸が締め付けられる。

こんなことをさせたかったわけじゃないのに、私のせいで不本意なことをさせている……。

「お母さん、私からもお願いです! ここで頑張りたいの。佐原さんには申し訳ないけど、お見合いはできません」

部長ばかりに、イヤな思いはさせられない。

私も母に頭を下げると、ため息が聞こえた。

「そう。香奈美の決心の固さだけは分かったわ。若狭さんは、結婚の意思があるのよね? それを証明してもらえると嬉しいんだけど」
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