鬼部長と偽装恋愛はじめました
とにかく部長に電話をしなければと思い、スマホを取りにいっている間に、着信音が鳴った。

それは部長からで、一気に緊張が増す。

なにかあったのかと思い電話に出ると、いつにも増して不機嫌な部長の声が聞こえた。

《香奈美、とにかくオレのうちに来い》

《え? 部長、それって……》

もしかして、この事態を知っている?

こうしている間にも、荷出しは着々と進んでいきながら、私は焦りを隠せず聞いた。

《もしかして、部長は私の引越しを知ってるんですか?》

《ああ、香奈美のお母さんから連絡あったから》

いつの間にか、部長の電話番号まで聞いていた母は、部長に引越しのことを話したらしい。

《部長、OKされたんですか? 突然こんな……》

《お前のお母さん、完璧怪しんでたからな。それに、オレにも多少責任はあるから》

責任だなんて、全ては私のせいなのに……。

《本当に、すみません……。でも、これで母は気が済んだと思います。だから、すぐに出ていきますので》

《とにかく、そういう話は会ってからだ》
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