鬼部長と偽装恋愛はじめました
長く感じられた昼休憩が終わり、時間差でオフィスへ戻った私と部長は、例の“あーん”が、まるでなかったかのようになっている。

さっそく部長から落とされた雷に、私は早くも戦闘態勢に入ったからだ。

「本城、だから何で修正されてないんだ?」

部長は報告書を、私に投げつけるように突き返した。

ほとんど勢いでそれを受け取った私は、部長を思い切り睨む。

「してます! そんなに言うなら、ちゃんと教えてください」

直せ、直せって、そればっかりで具体的に教えてくれない。

頭ごなしに否定されても、もうこれ以上は、どこをどう修正していいかが分からなかった。

かなり疲れてしまい、イライラも頂点になってきて、自分でもそれが顔に出ているのが分かる。

「本城は、研修で何を学んだんだ? 心に残ったものは無かったのか? オレにはこれを読んでも、それがまったく伝わってこない」

私を見据える部長は、諭すようにそう言った。

「分かりました。直します」

ここでこれ以上食いついても、堂々巡りになりそう。

報告書を握りしめながら唇を噛み締めると、身を翻しデスクへ戻った。

真由は、相変わらず私を興味津々の目で見ている。

こんなに口論になっているのに、まだ噂を信じているのか。

毎日繰り広げる私と部長のバトルは、仲が良くない証拠だと思うけど……。

昼休憩の出来事も、私の記憶の中から削除しよう。

部長が私にとって、大嫌いな上司に変わりはない。
< 9 / 116 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop