四百年の恋
***


 ……松前の夜桜見物から半年近く経った、その年の秋。 


 夏休みを終え、大学の後期授業がスタートした。


 花里真姫たちは、函館(はこだて)市内にある大学に通っていた。


 教育系の学部の三年生。


 社会科の教員志望者が集まる学科。


 社会科の中にも、歴史、政治経済、地理……などとコースが細分化されているが。


 真姫たちの所属は、歴史。


 その中でも、地域の歴史を重点的に学ぶコースを選択している。


 函館は、戊辰戦争(ぼしんせんそう)最後の激戦地。


 五稜郭(ごりょうかく)に旧幕府軍が立てこもって、新政府軍との激しい戦いが繰り広げられた。


 新撰組の副長・土方歳三(ひじかた としぞう)最期の地としても有名。


 それに加え、函館に近接する松前は前述の通り、戦国時代末期からの歴史のある城下町として知られている。


 これまた面白いテーマの一つだった。


 どうしても戊辰戦争や土方歳三のほうが知名度が高いため、卒論のテーマは幕末~明治維新にする学生が大部分であるが……。
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