四百年の恋



 「つまり殿が月どのをご寵愛なさるのは、果たせなかった初恋の相手に月どのを重ねているだけなのね」


 「そうとも知らず月どのは、冬悟さまからとのに乗り換えるのに成功したと思って、舞い上がっておられるのでしょう」


 ……その辺りから、女たちの声が月姫の耳に届かなくなった。


 冬雅の初恋の相手の話は、当然初耳。


 (その娘が、私によく似ていた・・・? そして殿が強く私を求めるのは、愛ゆえではなく。初恋の相手の面影を重ね合わせて、遠い昔の甘い思い出に浸っているだけ……?)


 聞かなければよかったと姫は強く思った。


 (どうしてこんなに胸が苦しいのだろう)


 姫の胸の鼓動はますます高まった。


 確かに動揺している。


 (殿のことなど、何とも思っていないはずなのに。どこにも逃げる場所がないゆえ、あきらめて抱かれているだけなのに)


 その時急に、強い雨が降り始めた。


 涙も何もかも、かき消してしまうかのように。
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