四百年の恋
 その時ひらひらと、桜の花びらが舞い降りてきた。


 いつの間にか花は、満開になったのだろうか。


 満開になると同時に、今度は散り始めるのだろうか。


 気がつけば日が翳り、風が肌寒くなってきた。


 「遅くなっちゃったな。今帰れば、まだ明るいうちに帰宅できるか?」


 「自転車で30分くらいなので、十分間に合います。先生はこれから部活の指導ですか?」


 「そうだ。春季大会に向けて、ラストスパートだからな」


 「頑張ってください。じゃ私はこれで」


 「気をつけて帰るんだぞ」


 美月姫は夕日を浴びながら、駐輪場へと歩き去った。


 影が長く伸びる。


 生まれ変わった月光姫は、クールなリアリスト。


 真姫とは全く異なる性格。


 甘い夢に酔っていられるようなタイプではない。


 (いずれ運命に導かれるように、全ては変わり始めるのだろうか……)


 美月姫の後姿を見送りながら、圭介はふと思ったのだった。
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