四百年の恋
 「離れたら即、迷子だぞ。絶対に離れるなよ」


 その彼が先頭で懐中電灯を手にして、道案内。


 「はーい」


 それに他の五人が付き従っていた。


 万が一懐中電灯を落とすようなことがあれば……、あたりは真っ暗闇。


 遭難してしまいそうと言っても大げさではないだろう。


 それくらいの暗闇だった。


 「美月姫、怖くない?」


 カップルじゃないほうの女子が、美月姫に心細そうに尋ねてきた。


 「大丈夫だよ。ここ一応札幌市内なんだから」


 強気に振る舞ってはいるものの。


 万が一はぐれてしまっては大変なので、美月姫は先頭のカップルから離れないよう気をつけて歩いていた。

 この日は満月の夜だった。


 「……あれ? 月がぼやけてきたんじゃない?」


 坂道を登りきると、しばし草むらの中に設けられた橋を渡る道が続いていた。


 その橋の手すりに触れながら空を見上げた時、美月姫は月がぼやけているのに気がついた。
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