四百年の恋
 「花里さん。かなり酔っているようだね。顔、真っ赤だよ。早く部屋に戻りなさい」


 真姫は自室へと戻った。


 ここまでどうやって帰って来たのか、記憶がない。


 函館駅近辺の居酒屋から、五稜郭に程近いこの寮までは、二キロくらいの道のり。


 未だにめまいがしているこの状態で、二キロ近くも歩いてきたとは思えない。


 (福山くんが、タクシーに乗せてくれたのかな)


 それしか考えられなかった。


 次に会った時にでも、タクシー代を支払おうと思ったのだけど。


 「……」


 また思い出す、重なった唇の感触。


 それだけで耳までも赤くなる。


 次に会う日、恥ずかしくて目を合わせられなさそうだった。


 だけど。


 それが現実なのかどうかさえ、定かではない。


 もしかしたら夢なのかもしれない。


 だとしたらリアルすぎる夢。


 (ほんとに……どうしよう。次会った時目を合わせられない)


 その夜、なかなか眠られなかった。


 重なった唇の感覚が、鮮やかに記憶に残っていて……。
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