四百年の恋
 「……真姫?」


 急に黙り込んだ真姫を、麻美は怪しんだ。


 「やっぱりあんた……」


 「おはよう、真姫」


 背後からかけられた声に、真姫は驚いた。


 「福山……くん」


 隣の麻美も、驚いて見上げている。


 「隣、空いてる?」


 真姫は言葉を発することができず、ただ頷いて反応した。


 すると福山はそっと隣に座った。


 「この前の夜、楽しかったよ」


 周囲が聞き耳を立てている中、誤解を招くような発言を……。


 真姫は恥ずかしくて、うつむきがちに対応した。


 「一度、夜の函館山ロープウェーに乗ってみたいんだよね」


 周囲の監視網を気にすることなく、福山は真姫に誘いをかける。


 「真姫の予定は?」


 いつの間にか福山は、「真姫」と呼ぶようになっていた。


 「真姫」と真姫を呼ぶのは、今のところ女友達だけで。


 男子は皆、名字の「花里」と呼んでいたにもかかわらず。


 当然周囲の者は、二人の関係を疑い、確信した。


 二人の会話を斜め後ろの席で聞いていた圭介は、握っていたシャープペンシルの芯をバキッと折った。
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