四百年の恋
 「誰だよトウゴって」


 圭介が聞き返した瞬間だった。


 ガシャン! と凄まじい音を立てて、天井の電球が砕け散った。


 ガラスの破片が辺りに飛び散り、一片が圭介に命中した。


 「いてっ!」


 圭介の頬に切り傷を残す。


 真姫を抱こうとするものの、頬を伝う血が気になり目の前の行為に集中できず、圭介が一瞬体を離したその時。


 ミシッ……。


 階段の下から足音がした。


 誰もいないはずの研究棟に、入り込んでいたのは……。


 「福山……」


 なぜかそこには、福山が立っていた。


 「福山くん!」


 「お前、どうしてここに」


 彼の受講している授業のある日でもない上に、すでに暗くなり学生たちの姿もまばらなキャンパス。


 なぜここに福山がいるのか、非常に謎だった。


 「真姫を放せ」


 福山は静かに告げた。


 「お前こそ出て行け。邪魔するな」


 圭介も言い返した。


 「邪魔だと?」


 福山は苦笑しながら述べた。


 「嫌がる女を無理やり自分のものにして、楽しいか?」


 「うるさい! 俺は入学した時からずっと、こいつのことが気になっていたんだ。ぱっと出のお前になんか、渡すものか」


 「入学……ね」


 福山が苦笑した。
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