四百年の恋
 「樹齢、約400年……」


 真姫は逆算してみた。


 今から400年前といえば、ちょうど戦国時代末期だ。


 「その頃北海道にも本格的に、大名による支配体制が確立されたんだ」


 京から遠く離れた北海道は、戦国乱世の争いとは、一線を引いていた。


 しかし戦国時代の末期、福山(ふくやま)一族がこの地に定着。


 福山城を築き、北海道支配の拠点とした。


 当時本州以南では、何万石~百万石の大名が存在していたものの、北海道はまだ米の生産が不可能で、米の生産高によって決まる石高(こくだか)はゼロだったけど。


 代わりに海産物は豊富に取れたし、アイヌとの交易で莫大な富を得て、それを元手に本州との交易で栄えた。


 「その福山家の殿様は、正室に代々、京の公家(貴族)の姫君を迎えたんだ。姫君の輿入れ(嫁入り)の際に、この桜も京から持ち込まれて、植えられたというわけ」


 「花嫁道具の一つみたいなものだったのね」


 推定・樹齢400年。


 北海道でこんな桜の巨木、見ることはない。


 幹も太く、はるか頭上に伸びきった枝の先まで……桜の花びらで埋め尽くされていた。
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