白雪姫の願いごと
◇◇
その日の夜。
「……弱ったな」
眉を寄せて不機嫌な顔をした東宮寺雅彦はそう呟くと、リビングのベッドで眠りこけている同居人を見つめた。
視線の先には、気持ちよさそうな顔で眠っている愛理。もう寒い時期にも関わらず、風呂上りだったからかいつもよりも薄着だ。
――思わずパジャマの間から見える鎖骨を目で追いそうになっている自分に気付き、慌てて目をそらす。
「おい、起きろ。風邪引くだろうが」
「……ん、ぅん…………」
動揺していたからかいつもより乱暴な動作で彼女の身体を揺さぶるが、彼女は全く起きる気配がない。それどころか、伸ばした俺の手に甘えるようにすり寄ってくる。
「くっ……」
なんだこれ。可愛すぎるぞコイツ。
このままだと自分の理性が危ない気がして、俺は一度彼女から手を引いた。
愛理はしばらく名残惜しそうに眉を寄せていたが、やがて再び寝息を立て始める。
そんな彼女を見て、俺はガシガシと乱暴に頭を掻いた。