勝手に百人一首
さっきまではアホやらバカやら言われて、めちゃくちゃムカついてたけど。





今は、佐藤の「アホ」に優しさを感じてしまう始末。






ーーー人生って、アンビリーバボー。





でも、ひさしぶりに包まれたひとの体温は、とってもあたたかい。





あたしは佐藤の背中に手を回して、ほぅ、と息を吐いて、小さく言った。






「………えーと。

わたくし、1505室の大谷楓と申します。


えー、今後とも、よろしくお願いします」






ぼそぼそと言うと、佐藤はぶはっと吹き出して、「今さらかよ!」と笑う。





そして、あたしを抱きしめる腕にぎゅっと力を込めた。







ーーーー生きてればいいことある、って、あれ。





案外、本当かもね………。






佐藤の肩に頬を当てながら、あたしはそんなことを考えていた。







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