勝手に百人一首
でも、どうしたって、興奮した声で交わされる会話の内容は、あたしの耳に飛び込んでくる。






「今井、マジ!?」




「…………や、」




「マジだよ、だってこいつ、いっつも神山さんのほう見てるし!」




「…………別に、そんなことねぇって」




「そーいや俺見たぞ、昨日二人で一緒に帰ってた!」




「あれは別に、たまたま………」




「うおー、照れてる!」




「うっせえな!」




「ムキになるとこが怪しくねえ!?」




「だから別にムキになんかっ」






いたたまれない気持ちになって、あたしは席を立ちたくなったけど。





このタイミングで立ち上がって教室を出たりしたら、あたしまでからかわれるに違いない。





だからあたしは、背中にちくちくと刺さる視線を感じながらも、貝殻のようにだんまりを決め込んでいた。






< 35 / 102 >

この作品をシェア

pagetop