勝手に百人一首
(………いっそ、死んでしまいたい)






はらはらと涙の伝う頬を両手で覆い、エレティナは嘆いた。






(ひとはいつか必ず死ぬという。


この命もいつか必ず絶えるというならば………いっそ今のうちに絶えてしまえばいいのに)






窓の外の三日月は、うたた寝のうちに、ずいぶん高いところまで昇っていた。




神に嫁ぐ刻が近づいている。




こんな心のままで。






(だって、このまま生きながらえていたら………。


想いを抑えつづけてきたものが、必ず弱ってしまうわ。


そして、いつかきっと、忍びつづけてきたこの恋心が、私の身体から溢れ出してしまうに違いない。



そんなの、だめだわ。


許されないわ………)






しかし、自ら命を絶つなどということは、ラウレンダ王国では、この上ない大罪であった。





エレティナは罪の意識に慄きながら、眠ることもできずに夜着に身を包みこんでいた。






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