How much?!


明日も仕事だから早めに寝なくちゃ……。

未だボーっとする思考と、唇に残るキスの余韻。

そして、いつになっても鎮まりそうなにない胸の鼓動と。

乙女のような反応を示す上気した頬。


……ダメだ。

完全に彼のキスに酔いしれてしまった。



どうやって部屋まで戻って来たのかさえ記憶が曖昧で。

明日も仕事だというのに、とても眠れそうにない。


私、こんなにも“キス”や“男の人”に飢えてたの?!



久しく味わってなかったあの感覚。

私はこの感覚を知っている。


―――――『淋しい』という感情を。


彼が唇を離した瞬間、感じてしまった。

満たされない心の隙間を。


求めてしまったら、私の負けなのに。

認めてしまったら、私の負けなのに。


なのに、どうして………消えないの?



ソファに倒れ込んだ私はギュッと目を瞑ると……。

ドレッサーの上に置いておいた携帯がブブブッと震え出した。


重い足取りでドレッサーへと向かい、それを手にする。

するとメール送信者の名前に、声に出すより先に胸がキュンと反応した。


―――――麻生大和


震え気味の指先でメールを開くと。


『ネクタイ、ありがとうな。これって、限定生産のブランドだよな?確か、全世界で柄毎に100本ずつしか生産しないって有名な。貴重なモノをありがとう。大事に使わせて貰うな?』


毒の“ど”の字も無いようなメール。

しかも、ネクタイのブランドの事を知っていただんて……。

ストレートな言葉に思わず涙が滲み始めた。


すると―――――。


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