How much?!
部長はあからさまに視線を逸らした。
“やっぱり”って、何?
私と彼の関係なんて、部長は知らない筈なのに……。
「部長」
視線の先に回り込んで、これでもかって位に鋭い視線を向けると。
「ったく、お前には勝てないよ」
「………どういう意味なんですか?」
紺野部長は部屋の隅に椅子を2脚用意し、座るように促した。
社内で紺野部長に堂々と話し掛けるのは私と須藤さんくらい。
皆川さんだって、気を遣っているみたい。
そんな部長と部屋の隅で――――。
「年末に、大久保店へ仕出し要員に行った事があっただろ」
「あっ、はい」
「あの時、俺は麻生と改装手伝いに室山店にいたんだ」
「………はい」
「業者に配る弁当が足りなくて本部に連絡を入れた際に、須藤に大久保店に向かった事務員は誰かと尋ねたら、当然のように『管理課の2大柱ですけど?!』って、怒られたんだよ」
「……須藤さん」
「お前と相澤はうちの看板娘だからな。須藤が怒るのも無理はない」
部長にも須藤さんにも高く評価して貰えて、心から嬉しさが込み上げて来る。
すると、
「須藤との会話を聞いていた麻生が俺にこう言ったんだ。『午前中の仕出しならともかく、夕方からの仕出しとなると、帰りの交通手段が絶たれますよ』ってな」
「えっ?」
「確かに麻生の言う通り、あの地域は通常でも1時間に1本だし。寒い中、待たせるのも可哀想だなと思ってな」
「………」
「そしたら、『俺が行って来てもいいですか?』って俺に許可を求めて来たんだよ」
「えっ?!」