How much?!


「私は早々に降参した方が良いと思いますよ?」

「…………それは無理」

「え?……どうしてですか?」


志帆ちゃんがカップをテーブルの上に置き、じっと私を見据えた。


「実は、ただの勝負じゃないんだよね……」

「はっ?!……もしかして、何か賭けてるんですか?」

「…………ん」

「何を?………ってか、先輩は何を賭けたんですかッ?!」


ちょっと興奮気味に詰問して来る志帆ちゃん。

昨夜のメールにはそんな事、触れられなかった。

だって――――………。



「はっ………」

「…………は?歯をどうにかするんですか?」

「いや、そうじゃなくって………」

「もうッ!苛々するなぁ!ハッキリ言ってくれないと、相談に乗りませんよッ?!」

「うっ…………ごめん。………あの………ね?」

「はい、……………で、何です?」


私が煮え切らない返事をしているものだから、口調が荒くなって来た。

でも、それは仕方がない。

私がハッキリ言わないのが悪いんだから。


私は意を決して深呼吸した。


「あのね」

「はい」

「…………初めてを………」

「初めてって?」

「だから、…………私の初めてを………あげる約束をしたのッ!!」


自分で言っておいて、今すぐ死ねる!!

何これ……羞恥プレイ??

恥かし過ぎて、両手で真っ赤になった顔を覆い隠す。


女・29歳。

あと数ヶ月で30歳になる。

けれど、私は未だに経験が無い。

売り言葉に買い言葉で、つい口が滑ってしまったのだ。


< 21 / 290 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop