二人のプリンセス
「あの子がいないと私……不安でしょうがないですわ……」

クレスは眉をさげてつぶやいた。

「クレス、まぁそう落ち込むでない。レアルのことだ。またひょっこりと姿を現わすだろう」
「……」
クレスは涙をためて黙り込んでしまった。
無言のクレスをよそにアグレラは続ける。

「そんなことよりクレス、明日はお前の誕生日と同時に、初めてお前が国民へ姿を見せる公式の場となるのだよ。私も国のみんなも明日を楽しみにしている。明日はよろしく頼むぞ」

アグレラはニコニコと上機嫌にクレスの肩をたたいた。

レアルが見つからない今はそのような気分にはなれない。
とは言うこともできず、クレスは不本意ながらもうなずいて答えた。

「はい、お父様。クレスも明日が待遠しいですわ」

アグレラはクレスの言葉に満足したように、大きくうなずいた。
「そうか……うん。明日は忙しくなるぞ」

そして、明日の最終確認会議があると言いながら、長い廊下をかけていった。その足取りは軽く、ほぼスキップ状態だ。
一人残されたクレスは、再びレアルを探そうとアグレラとは反対の方向へ足を進めた。

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