年下ワンコとオオカミ男~後悔しない、恋のために~
その日も結局、部屋のみんなが帰るまで私は会社に残った。

カフェのプランを早く形にしたかったのもあったし……家に帰って一人になると、また違うことばかり考えてしまうのが嫌だった。


気を抜くとすぐ、咲さん、とあの子を呼んだ、大輔くんの声が蘇る。


体を寄せられても平然としていて、自分から遠慮なくあの子の背中に手を置いて。
私が泣いた時に抱き寄せることを躊躇った、あの不器用さはどこかへ消えて、あの子とは親しげに顔を寄せ合って、笑っていた。

あの子の、うちの大輔、という言い方に、身勝手に苛立ちを感じた。私よりもよほど近い位置にいるあの子が羨ましくて、一個上、という年齢の近さに嫉妬する。

酔っ払って大輔くんを呼び出した後は、あの部屋に二人で帰るのだろうか。


どうして私はもっと遅く生まれなかったんだろう。


どうしようもないことに落ち込んで、そんな自分に嫌気が差した。大輔くんと私は釣り合わない、そんなことは祥裄に言われなくたって、自分が一番感じている。
 

スケジュールを確認するために手帳を開いて、自分で書き込んだバースデイの文字に目をやった。

二回目のカットモデルを引き受けた、私の誕生日は、もう明日。ただの練習台としての顔を保ち続けることができるだろうか、という不安を、頭を振って思考から追い出す。

心配しなくても、冷静なポーカーフェイスは私の得意技じゃない。
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