年下ワンコとオオカミ男~後悔しない、恋のために~
わかってんでしょ、と内心ツッコミを入れながら頷くと、絵里ちゃんは可愛い顔を歪めて私を見た。
泣くか、怒鳴るか、さあどっちだと身構えると、絵里ちゃんはいきなり、がばっと頭を下げた。


……はい?


「お願いです。その結婚、もうちょっと待ってください」

「はい?」


心の声がそのまま口から出てきてしまった私に、顔を上げた絵里ちゃんが必死の形相で詰め寄った。

「私、祥裄さんが本当に好きなんです。もう一回チャンスをください。嘘とかつかずに、きちんと向き合いたいんです」

言ってることはめちゃくちゃだと思うけど、あの絵里ちゃんが泣きも怒りもせずにちゃんと頭を下げたことに、ものすごく驚いた。

「沙羽先輩から嘘ついて奪ったこと、本当に反省してます。すみませんでした。
でも、私、真剣に祥裄さんのこと好きなんです。好きになっちゃったんです。お願いです、せめてもう一回だけ、二人で話をするチャンスをください」

その言葉の内容に、ひっかかりを覚える。

「もしかして、ちゃんと別れ話できてないの? 一方的に別れようって言われただけ?」

絵里ちゃんはこくんと頷く。


「嘘ついてたことがバレて、全部本当のことを話したら、その場でもう別れよう、って言われました。その時は私も泣いちゃって、冷静に話なんかできなくて、出て行く祥裄さんを引き止めることもできなくて。
その後、落ち着いてきちんと話をしようと思って連絡しても、こっちから話すことは何もないから、の一点張りで、私の話なんて端から聞いてもらえないんです。電話も出てくれないし、会いに行っても追い返されるし、メールも返事くれないし……」
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