年下ワンコとオオカミ男~後悔しない、恋のために~
あいつはバカか、と心底呆れた。
話し合って別れる、っていう考えがないのだろうか。

私の時はお互い様だったから文句は言えないけど、別れ話を一言で終わらせて、きちんと向き合おうとしている子を相手もせずに追い返すなんて、ひどすぎる。

いくらもうやり直す気はないのだとしても、せめて話は聞いてあげるべきだ。


「明日香から、祥裄さんと沙羽先輩に結婚話が出てるらしい、って聞いて、ああやっぱりな、って思ったんです。祥裄さん、私といるときもずっと、沙羽先輩のこと忘れてなかったから。
私が小細工したって結局無駄だったんだな、って思い知らされたから、だからもう、お二人の邪魔をしようとか、バカなこと考えません。でももう一回だけ、ちゃんと祥裄さんに気持ちを伝えたいんです。お願いです、そのチャンスを私にください」


もう一度勢いよく頭を下げて、絵里ちゃんが肩を震わせた。
ああ泣き出しちゃったか、と思ったけど、苛つく感情はなくて、ただただかわいそうにとしか思わない。

「とりあえず、頭上げてよ、ね。祥裄のバカには、きちんと絵里ちゃんと話すように説得してみるから。
消化不良のまま別れるのって辛いよね。わかるよ、その気持ち」

絵里ちゃんの背中に手を当てて、宥めるようにさすると、うるうるの目を私に向けて抱きついてきた。

ひっくひっくとしゃくりあげるその姿は、これだけ反発している私ですらどうにかしてあげたいと思ってしまうのだから、そりゃ男なんてイチコロだな、と変に納得してしまう。
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