年下ワンコとオオカミ男~後悔しない、恋のために~
さわせんぱーい、ごめんなさーい、とぼろぼろ泣きながら謝られたら、もう怒る気なんて失せる。
私の肩に顔を埋めて泣くその背中を叩きながら、絵里ちゃんが落ち着くのを待った。


「ねえ。祥裄の、どこがそんなに好きなの?」


しゃくりあげる声がだいぶん小さくなった頃を見計らって私が尋ねると、絵里ちゃんが顔を上げた。

「沙羽先輩、それイヤミですか? それとも妻になる余裕?」

「ううん、純粋な興味。……ごめん、イヤミっぽく聞こえるよね」

謝る私を見ながら、絵里ちゃんが鼻の頭にきゅっとシワを寄せた。

「あんなに完璧な人、いないと思います。かっこよくて、優しくて、一途で。
初めは私ももっと軽い人だと思ってました。でも、私の嘘にも真摯に向き合って話を聞いてくれて、ああこの人、こんなに誠実な人だったんだって驚いて、どんどん好きになっていきました。私も沙羽先輩みたいに思われたい、大事にされたい、って思って」

涙が止まった絵里ちゃんは、くすん、と鼻を鳴らして、体を離す。

「沙羽先輩が羨ましいです。あんな人のお嫁さんになれるなんて。でも、今まで祥裄さんを支えてきたのは沙羽先輩ですもんね」

涙目ながら健気に笑みを浮かべるその顔は、本当に可愛かった。自分が思うままに行動して、素直に感情をぶつけられる、そんな絵里ちゃんのほうこそ羨ましい。


「最後に一回だけでいいんです。きちんと気持ちを伝えられたら、あとはお二人を祝福します」


お願いします、ともう一度頭を下げる絵里ちゃんは、私にはなんだか眩しく見えた。
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