年下ワンコとオオカミ男~後悔しない、恋のために~
回りくどい詮索は無視して、広げられた浴衣を手に取る。

お母さんが昔着ていたものとか、おばあちゃんが勝手に買ってきたものとか、うちにはやたらと和服が揃っている。
お母さんは密かにいいとこのお嬢様で、昔は茶道なり華道なりを嗜んでいたらしいけど、その着物たちが活躍しているところを見たことは一度もない。ましてや一人娘の私がなんの興味も示さなかったので、文字通り箪笥の肥やしと化している。

昔私に着せるために買ったらしいピンクの花柄や、白地に大柄の朝顔が配置されたもの、なんだか高そうな総絞りのもの。
これは三十路にはキツイわよね、とかこんなの着たら余計に老ける、とか好き勝手なことを言いながら、主にお母さんが吟味して選び出したのは、紺地に淡い薄紫と山吹色の大柄の桔梗を配置した、レトロな雰囲気のもの。帯は淡い紫と桃色のバイカラーのものを合わせた。
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