年下ワンコとオオカミ男~後悔しない、恋のために~
話しながら歩いていると、やがて同じ方向に歩いていく人の姿が目立ち始める。
地元の人なのか、家族連れや、カップルでも高校生のような初々しい感じの子達が多い。
その人たちについていくように進んで、ずんずん細い道を突っ切っていく。

私たちだけだったらちょっと不安になりそうな、いつもはほとんど使われてなさそうな道を抜けると、たどり着いたのはちょうどそこだけ隔離されて飛び地になったような海岸だった。

大きな堤防が伸びていて、そこに人が集まっている。どうやらそこからの眺めが一番いいらしい。
まだ余裕がありそうで、あっちの方が空いてそう、と綾川さんが歩き出した、その時。

「あっれー、辻井くん?」

辻井さんを呼ぶ声がして、振り返ると、四十代くらいの男性が奥さんらしき人と一緒にこちらを見ていた。

「仙波(せんば)さん」

驚いたように辻井さんが名前を呼ぶ。

「偶然だねえ、君も見に来てたんだ。
いやあ、やっぱり君は目立つね、遠くからでもひと目でわかったよ」
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