年下ワンコとオオカミ男~後悔しない、恋のために~

「ちょっとあなた、失礼ですよ」
「ただの冗談だろう、お前はいちいちうるさいな」

その人が奥さんと言い合う姿を困ったように見ながら、すっと辻井さんが綾川さんの姿を目で追った。
顔には出さないけど気にしているのがわかって、どうするべきかと私が動きあぐねていると、大輔くんがあの、と声をかけてきた。

「俺もあっちに知り合いがいるみたいなんです。ちょっとだけ行ってきますね」

ああ、と頷く辻井さんが頼むと言うように目線で訴えて、大輔くんが小さく頷いて綾川さんの後を追う。

「もったいないなあ、その顔を持ってるのにもう遊べないなんて」
「仙波さんと一緒にしないでください。どれだけ奥さん泣かせたんですか？」
「数え切れないわよ、ねえあなた？」

調子よく話を合わせながら、完璧な笑顔で笑っている。
この人は今心の中で、一体何を思っているんだろう。