恋する白虎
な、に!?

眼を見開いた永舜の前に傘を放り出し、杏樹は窮奇の体を抱き上げようと両腕を開いた。

意識はあるものの、窮奇の出血は激しかった。

ヤバイぜ、地底に帰らないと、もたねえ。

窮奇は、痛みに耐えながら、必死になって意識を集中させ、門の位置を探した。

どこだ、どこにある!?

どこだ……どこだ!?

その時、脳裏に門が見えた。

窮奇は、カッと両目を開くと、杏樹を片手に抱きかかえ、ありったけの力で地を蹴り、空に舞い上がった。

「きゃあああっ!」

くそっ!!

あいつ、門をくぐるきなんじゃ……!?

永舜は窮奇を追いかけた。

杏樹!杏樹!

あとわずかで捕らえそうになったところで、杏樹を抱いた窮奇の姿が、かき消えた。

そ、んな……!

杏樹が、煉獄に……!!

「杏樹ー!!」

永舜の声は虚しく空に響いた。
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