恋する白虎

涙のキス

杏樹は、恐ろしさのあまり眼を閉じた。

窮奇に抱きかかえられて空を翔けたかと思うと、真っ暗な洞窟のようなものに吸い込まれた。

ドサッと固い地面にぶつかるように降ろされ、思わず顔をしかめる。

「悪いな、杏樹。荒っぽくてよぉ」

肩で荒い息を繰り返し、蒼白になった顔をわずかに歪めて窮奇は笑った。

杏樹は恐々、辺りを見回した。

「ここ、どこ?」

暗くて、ジメジメしていて、ぬるい風が肌を舐めるように吹いている。

空は黒に近い赤色で、太陽か月なのか、どちらかわからない丸い天体が浮かんでいる。

地には木々や草が繁っているが、その色は紫や黒色で、周りは全体的に薄暗かった。

窮奇は、大きく息をして、杏樹を見た。

「ここが、俺の住んでるところだ」

こんなところに?

「悪いけどよ、杏樹、肩貸してくれねーか?あそこの泉まで、俺を連れていってくれ」

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