恋する白虎
な、なんか、私……。

目の前の男の、苦しそうな顔にいたたまれず、杏樹は彼に声をかけた。

「あの、お名前を伺ってもいいですか?」

けれど彼はなにも答えず、顔を背けたまま、寝台の縁を握り締めていた。

「あの、ごめんなさい」

男は弾かれたように顔をあげ、杏樹を見つめた。

「なぜ謝る?」

杏樹は、戸惑いながら答えた。

「あなたが、凄く辛そうだから。
それが、私のせいに思えて……」

男は杏樹を強く抱き締めた。

「きゃ!」

「俺の名は、永舜」

「エイシュンさん?」

永舜は絞り出すように言った。

「ああ、そうだ。永舜だ」

「エイシュンさん、あの、苦しい……」

腕を離して身を起こすと、杏樹の茶色い大きな瞳が、不安そうに光っている。

永舜は、ちょっと笑った。

「今日はもう休め。
明日になったらまた話そう」

杏樹はコクリと頷いた。

エイシュンと名乗った彼の、悲しい笑顔に胸を突かれながら。










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