恋する白虎
杏樹は、そんな男を見て、遠慮がちに尋ねた。

「あ、あの、ここは何処ですか?」

白銀の髪の男は、眼を開けるとその瞳を杏樹に向け、低い声で囁くように言った。

「杏樹、覚えてるか?俺を」

杏樹は、彼を凝視した。

覚えてるか?

なんで、そんな質問するの?

前に、会ってるから?

そうだとすると……ど、どうしよう、覚えてない。

「ご、ごめんなさい。
……あの……どこかでお会いしましたか?」

杏樹がそう答えると、男は僅かに眼を見開き、グッと苦しそうに眉を寄せると、顔を背けた。

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