恋する白虎
永舜は、そんな杏樹を暫く見ていたが、やがて優しく微笑んだ。

「おいで」

「エイシュンさんが、作ってくださってたんですね」

「昔から、料理が趣味なんだ」

永舜は何でもないといった風に、さらりと言った。

嘘よ。

だって、思い出したもの。

最初に一緒に料理を作った時、あなたは焦がしたもの。

「杏樹?」

杏樹は、涙が溢れる顔を上げることが出来なかった。

「杏樹、泣くな」

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