恋する白虎
フワリと永舜の両腕が杏樹を優しく包み込み、胸に抱いた。

……部分的には思い出すのに、どうして気持ちははっきりと思い出せないの!?

わからない、わからない!!

「無理をするな」

永舜は杏樹を優しく上向かせると、頬の涙を大きな手で拭った。

「今のお前が、お前自身だ。苦しむ必要はない」

「だって…!うぅっ…ひっく」

永舜は、切れ長の瞳を眩しそうに細め、愛しいものを見るように杏樹を見て、囁いた。

「泣くなと言っているだろう」

(愛してる)

永舜は、心の中で呟いた。
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