恋する白虎
「リン……」

「なんとなく、記憶に」

リンさん……。

甘い視線を交わし合うリンと永蒼を見て、杏樹はそっと部屋を後にした。



その日の夜、杏樹は永舜の寝室を訪ねた。

口元の怪我はだいぶ良くなったが、相変わらず意識は戻らなかった。

杏樹は、永舜の体を布で拭きながら話しかけた。

「ねえ、永舜。私ね、結構思い出したのよ。初めて出逢った日の事も、自分から告白した事も、永舜って呼んでた事も。
私、本当にビックリしたんだからね、告白してる最中に、永舜がネズミを追い掛けて丸飲みにしちゃうから」

杏樹はフフフと笑った。

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