恋する白虎
慶吾はグイッと背伸びをし、杏樹を見た。

「今日は帰るわ。
またな杏樹。カレーうまかったよ」

優しい眼差しで杏樹を見つめ、頭をポンポンと撫でると、自宅へ戻って行った。

ふうーっ。

杏樹は息を吐きながら、全身の力を抜いた。

振り向くと、ムッとした顔でこっちを見据える永舜と目が合う。

……き、気まずい。

杏樹は永舜の脇を素早く通り抜けた。

永舜は、思いきり面白くなかった。

今すぐ杏樹を追いかけて、唇を奪いたかった。

だが、また怒られるのも嫌だった。

インターホンを鳴らしたのは俺に決まってるだろ!

永舜は、片方の拳を反対の掌で包み込んで眼を閉じ、白銀の白虎に姿を変えると空に向かってかけ上がった。
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