初恋
「あいつら、何やってるんやろな。見に行こか。」と直ちゃんが立ち上がったので、
自然にそれにならう。

「留美ちゃん、大丈夫かな。」とわたしが独り言をいうと、
「あいつ、ああ見えてそういうのはぼんやりしてるから大丈夫。」と返事が返ってきた。

思わず、「そうでもないよ。」と言うと、
怪訝な顔をしてから、「あいつ、みーちゃんに何かした?」ときつい口調で問いかけてくる。

「え、いや、別に。」と返事をしたけど、ちょっとあせってしまった。

「ぶっ殺したらなあかんな。」と物騒なことを言うので、適当になだめながら歩く。

わたしのこと、ふったって覚えてるのかな、この人。
妹みたいなもんなんかな。

まあいいか。大事って言ってくれたもんな。

みんなに楽天的と言われるわたしだが、
そのときも、「直ちゃんの二番目でとりあえずはいいか。」とふと思いついた。
いつまでもその地位に甘んじている必要はないのだし。

今のところ、状況は絶望的だけど。

道路を渡って海へ出ると、二人が向かい合って座っていて、
間に大きな砂の山が出来ていた。

わたしたちに気がついた留美ちゃんが、「美代子ー、こっちおいでー。カニおるでー。」と元気に手を振る。

直ちゃんが、「ほらな。」と笑って、
「おれにも見せてー。」と走り出した。




< 104 / 170 >

この作品をシェア

pagetop