あなたの一番大切な人(1)
【1章】深夜ー城内
 街中の木々が大きな幹を見せ、冬の訪れを迎えていた。

黄色い葉をつけていた銀杏の群れが、ここ数日の寒波によりすべて地面に散ってしまったからだ。

冬の象徴である小粒の雪が、降り注いでいる。

一時は大雪となり、視界を遮るほどの荒れた天気であったが、今では穏やかになり、冬の景色を楽しむことができる。

街にはオレンジ色の灯りがほんのりと付き始め、大きな月が多くの星の合間をくぐりのぼった。

ほとんどの家の造りは赤褐色調の煉瓦であるので、外の風は中に入ってこない。

しかし暖炉がなければ、冬の寒さをしのぐことは難しい。

アオディの冬は以外と厳しいものであった。


 
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