あなたの一番大切な人(1)
 彼女はそういうも、そのあとの言葉を告げることはできなかった。

 ただひたすら、顔を手で隠して嗚咽をもらしながら泣いていた。

 国王は、彼女の身体をそっと起こし、彼女の髪を整えた。

 彼女はしぶとく抵抗したが、彼の大きな腕がすっぽりと背中を抱えると、彼の鼓動が肌を通じて伝わってきた。

 その心音は穏やかで、彼女はその音を強制的に聞かされた。

 ミッドレーは天蓋幕を降ろし、ベッドから少し離れたところに移動した。

 彼女の視界には、もう彼の姿しか映らなかった。

 抱きしめられるその腕の力がむず痒くも気持ちよく、彼女はゆっくりと上を見上げた。

 彼の肩越しに、昨日も見た金色の小さなイヤリングが見えた。

 きれいな純金製だった。

 その揺れるリングを見ていると、ふと先ほど唇に感じた違和感がよぎった。

 何かは口であらわせないが、彼女の頬は少しずつ紅潮してきた。
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