千年の時空を越えて

遅い夕餉を済ませ部屋に戻る際、縁側に寄った。


雪「きれいな月・・・。」


私は、星空もそうだけど、昔の時代の夜空の虜になっていた。


総「本当ですね・・・。」


そう言ってるが、視線が、空ではなく、こちらに向いている。


雪「どうしたんですか?」


総「綺麗だなって見とれています。」


雪「え?何言って・・・。」


そう言うと、沖田さんに抱きしめられた。


雪「お、沖田様?」


そう言って、離れようとしても、また、ぎゅっと抱きしめる力が、強くなる。


諦めて、力を抜くと、沖田さんが、ポツリポツリと、話しだす。


総「良かった。戻ってくれて・・・。」


雪「え?」


総「昨日からいなくなるんじゃないかってずっと思ってたから・・・。いつ、いなくなってもおかしくない僕が言うのもなんなんですが・・・。」


昨日の夜、沖田さんと抱きしめ合って寝たことを思い出す。


総「僕、前に恋仲の人がいたんです。でも、その人は、かたぎの娘さんで、僕は泣く泣く別れました。もう、人を好きになることはないんだろうと思っていました。そんな時、雪が現れた。最初は、驚きましたけど、素顔の貴方を見たとき天女かと思いました。」



雪「天女ってそんな・・・。」


総「本当です。それから、丞ちゃんや土方さんに妬いたり男として女々しいって思うくらい、貴方が好きになっていました。僕は、いついなくなってもおかしくない。明日、死ぬかもしれない。近藤先生の為なら、何の迷いもなく死ねます。沢山の人や裏切り者も、この手で斬ってきた。一番大事なのは壬生浪士組で、貴方は二番。それは、これからも変わらない。でも・・・。僕は、貴方と少しでも、一緒にいたい。いついなくなってもおかしくない僕ですが、一緒にいてくれませんか?僕と恋仲になって欲しい。」


そう言って、沖田さんは、抱きしめる腕を緩めて、私を、見つめてきた。


どうしよう・・・。普段の自分なら、任務の為って間違いなく即答してるのに・・・言えない。苦しい。


どうして、こんなに、苦しくなるんだろう・・・。『任務』って隊長に言われたから?


苦しくて涙が溢れる。その涙を、彼は、優しく拭ってくれた。


私だって、任務が終われば、未来へ帰る。この人と永遠はない。それに彼は・・・。


私は、目を閉じて大きく深呼吸した。





任務だ。






そう言い聞かせて・・・。


雪「私でいいんですか?」


総「雪でなきゃダメです。」


雪「私もいついなくなるかわかりませんよ?」 (断って・・・。)


総「僕もです。」


雪「私も、未来のお役目があって、そちらの方を、優先させますよ?」(断ってよ。)


総「僕もです。」


芽「お断りの理由、無くなりました・・・。」


総「雪、好きです。僕と恋仲になってくれますか?」


雪「はい・・・。よろしくお願いします・・・。」


そして、彼の唇が、私の唇にそっと触れる。


苦しい。こんな風に言われて涙が出たのは、初めてだ・・・。


キスして、こんなに、苦しくなったのも初めて。


でも、今はこの温もりの中にいたい。



きっと、私も彼が好きなんだ・・・。だから、苦しいんだと、やっと、気づいた。


こんな気持ち初めて。でも、期間限定の恋。


それでもこの人の温もりを感じていたい。今は、任務とか何も考えずにいよう。


しばらく二人は、抱きしめあって、お互いの熱を感じていた。



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