続・元殺し屋と、殺し屋







ある日。

おれは彼女に呼ばれた。




「協力してほしいことがあるの」

「何ですか姫。
姫のためでしたら、おれは何でもしますよ」

「嬉しいこと言うじゃない。
実はね、好きな人を見つけたの」

「そうなんですか。
応援しますよ、姫。
姫の幸せが、おれの幸せですから」

「ありがとう大地。
でもね、その人には彼女がいるの。
その彼女の心から、その人の存在を奪ってほしいの」

「わかりました」




おれは姫の言う通りにした。

姫と同じ高校に通っていたけど、彼女―――逢沢知紗の通っていた高校に転入し直した。

逢沢知紗をおれのモノにすればいい。

そうすれば、きっと彼氏である小松恭真の心は、姫の元へ行く。

おれは姫と同じ演劇部のエースだったから、“一途に逢沢知紗を愛する男”を演じるのは楽だった。




予想通り、おれは逢沢知紗にフラれた。

でも良い。

“友達”で良いんだ。

そこから“恋人”へ誘って行けば。



仲良く登下校をするようにした。

そして頃合いを見て、おれはクラスの女子に合図をした。

その女子は家庭の経済状況が悪化していて、学校を学費未払いで退学の危機だった。

友達と離れたくない、と願う彼女を使った。

彼女におれは、昔から溢れんばかりにあったお金を渡した。

100万ほどのお札を束で渡し、頼むのはバイト。




バイト内容は、小松恭真に告白すること。




その間に、逢沢知紗を嫉妬させ、先に帰らせる。

1人で帰宅途中の逢沢知紗を捕まえ、一緒に帰宅する。

途中で再びお金を払いバイトしてくれる男たちが、おれたちを襲う。

そこでおれは嘘をついて竜王のトップだと言い、そいつらを追い払う。

そして、どさくさにまぎれ、知紗にキスをする。

その時に口に予め含んだ、父親特製の睡眠薬を知紗の口にいれ、小松恭真の記憶を消す。

知紗はおれと付き合い始め、小松恭真と別れる。

そうしたら、小松恭真は姫と付き合える。




完璧な計画だった。






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