短編集『秋が降る』
「やめろって!」

男がドスをきかせた声を荒げたが、そんなの関係ない。

逃げなきゃ、逃げなきゃ!

男のいる側のドアなら出られるかも、と伸ばした手を払われる。

それでもなお手を伸ばすと、
「しつこいんだよ!」
と、胸を思いっきり押された。

強い力で押し戻され、勢いよく窓ガラスに後頭部がぶつかる。

ガンッ!

強い音の一瞬後に、強烈な痛みが襲った。

「やべ・・・、おい、大丈夫か?」

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