短編集『秋が降る』
・・・きっと、またこの女がなにか言いつけたにちがいない。

わけの分からない小言を朝から聞きたくないな・・・。

「ごちそうさま」
そう言って立ち上がると、私は急いでカバンを手に玄関へ。

「ちょっと待ちなさい」
お父さんの声にも耳を貸さず靴を履く。

あせっているせいか、なかなかうまく履けないうちに、新しいお母さんが先に私に追いつく。

「どこ行くんですかっ?」

お父さんの後妻であるこの女は、いつだって私に敬語。
そのくせ、私の行動にケチをつける。

そういうところがまた、私の口調を荒げる。

「関係ないでしょ」
ドアを乱暴に開けて外へ。
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