短編集『秋が降る』
「話を聞いてほしいの」

しおらしくうなだれる女。

やめてよ。
まるで私が悪者みたいじゃない。

「結局・・・」

そこまで言いかけて、一瞬口を閉じた。
これを言ってしまっていいのだろうか?
そう思いながらも私はきっと言ってしまうんだろうな・・・。

口はすぐに開く。

「私がこの家を出て行けばいい、って思ってるんでしょ?」

女が驚いたような顔をして私を見た。
「どうして・・・?」

それは、『どうしてわかったの?』と言っているよう。

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