短編集『秋が降る』
そう思いながらも、カナさんの言葉を思い出す。

・・・そうだ親が私を売ったんだ。

「ここにお連れして」
杉浦先生がそう言うのを反対したかったが、なぜか言葉が出ずに口がパクパク動くだけだった。


会いたくなんてない。

どうせ殺されるのに?

それとも助けに来てくれたの?


いったいどっちなの!?

「お呼びたてしてしまい、申しわけありません」
杉浦先生が立ち上がってお辞儀をする向こう側に、お父さんの顔が見えた。その後ろには新しいお母さんも。

「こちらこそ、大変ご迷惑をおかけしました」
お父さんが深々と頭を下げた。

< 90 / 156 >

この作品をシェア

pagetop