短編集『秋が降る』
「先生」
いつの間に来たのか、女性のスカイが先生の後ろにいた。

「はい」

先生が女性を見る。

「飯野さんに殴られたスタッフは、もう心配がないとのことでしたので家に帰してよいでしょうか?」
チラッと私をにらむように見てくる。

「打撲程度だから大丈夫でしょう。シップだけ持たせてください」

「はい」
女性は頭を下げて戻ろうとして、
「そうそう、先生。飯野さんのご家族がおみえです」
と報告した。


イイノサンノ、ゴカゾク?


その言葉を理解するのに時間がかかった。

私の家族が来ている?
それは、私を助けに来てくれたってこと?

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