短編集『秋が降る』
お父さんが一歩前に出て、私を見る。
「人体実験? なんのことだ?」

「それは横にいる女が知ってるんじゃないの?」
ようやく声が出た。

新しいお母さんはギョッとした顔をして首を横に振った。

「この期におよんで、知らないフリするつもり? このスカイホームは、人体実験をする施設。私を含め、たくさんの人が投薬されてどんどん殺されているのよ! 知ってて私を誘拐させたんでしょ!?」

涙がどんどんこぼれ落ちた。

どうせ死ぬのなら全部言いたかった。

みんなが私を冷たい目で見る。

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