嘘つきなあなたからの恋文。
その日はとてもとても暑い日で、過去最高に暑いとニュースで言われる程暑い日で
暑がりの私は家で扇風機の前を陣取り、アイスを食べながらあまり興味もない甲子園中継をダラダラと見ていた。
一生しかない16歳の夏…
なのに私は好きな人を遊びに誘う勇気も無く、況してや好きな人…コタくんと卒業してから一切連絡すら取ってない楽しくない夏休みを満喫していた。
「あー……暑い」
「ちょっと花梨、お母さんにも扇風機の風くるように回してよ」
「無理ー」
「本当この子は…」
「だって暑いんだもん、自分を守ることに必死なんでーす」
「もぅ…」
テレビ官に映るのは同年代の男の子たち。
こんな暑い日に外で白球を投げて、打って、追いかけるなんてすごいことしてるよ。
青春を無駄遣いしてる私とは大違いだ。
そう思っていた時だった。
甲子園の歓声が響く部屋に電子音が鳴り響いた。
「花梨、出て」
「えー、お母さん出てよ」
「お母さんちょっと手が空いてないの!」
確かに少し後ろにいるお母さんは家事をして忙しそう。
「…仕方ない」
棒突きアイス片手に部屋に響く電子音が鳴る電話に近づいて受話器を握ると電子音がぴたりと止まった。