私の師匠は沖田総司です【下】

「あ、龍馬さん。先生は?」

「帰った」

褥の横に座ると、蒼蝶がジッと俺を見てくる。

「どうしたんだ」と目で尋ねると、蒼蝶が困ったような顔になった。

「……なんだか、龍馬さんが悲しそうな顔をしてる気がしたんです。どうかしましたか?」

蒼蝶は本当に人の感情に鋭いな。

隠していてもすぐにばれる。

「んー……、ちょっとな」

「悩み事なら聞きますよ」

「いや、大丈夫。でも、しばらくこうさせて」

蒼蝶の肩に頭を乗せる。

距離が近くなり、蒼蝶の香りがした。

やっぱり蒼蝶の香りは落ち着くな。

目を閉じていると、俺のクセのついた髪に蒼蝶の柔らかな手が触れた。

「えへへ。龍馬さんの髪を触りたい放題です」

ここぞとばかりに蒼蝶が俺の髪を弄び始める。ほんと、野郎の髪のどこがいいのかわからねえな。
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