私の師匠は沖田総司です【下】
『僕を見つけてくれたのが蒼蝶でよかった』
「私も、見える幽霊が師匠でよかったです」
後ろの方に顔を向ければ目を潤ませる師匠の顔が見える。
その姿は淡い光で包まれていて、光の粒となって消え始めていた。
「師匠……!?」
『そろそろ、時間みたいだね』
消えていく自分の手を寂しそうに見つめながら師匠が言う。
師匠の衿をギュッと握りしめると、とまっていたはずの涙がまた溢れてきた。
胸に顔を埋めれば抱き寄せられる。
……時間が、とまって欲しい。
タイムスリップするときから覚悟していた師匠との別れ。
でも、それが現実に迫ると、途端にいやだと思ってしまう。
師匠と別れたくない。ずっと、一緒にいてほしい……。
やだ、やだ、やだっ……一緒にいたいよ。
『蒼蝶と別れたくないな……』
顔を上げれば、顏に雫が落ちてくる。
雫の正体は師匠の涙だった。